映画「前田建設ファンタジー営業部」(オンライン上映会)

【知識と技術とアイデアと情熱の「ものづくりエンターテインメント」(つくらないけど)】

自宅でテレビやPCで映画を見ると、どうしても集中できなくて、途中で寝てしまったりするので、基本的には「映画は映画館で観る」派です。

ただ、今の状況では、それもできませんので、2020年4月はまったく映画館で映画を見ていません(たぶん、5月も)。したがって、ブログの更新もずっと止まっていました。ライブもないしね。

そんな折り、2月ぐらいに劇場で上映していた「前田建設ファンタジー営業部」のオンライン上映会というのがあったので、応募してみたら当選しました。

ずっとTBSラジオでCMが流れていて、気になっていた作品なのですが、今年は見たい作品が目白押しだったので、見逃してしまっていました。

この原作というか、もとの企業広報企画は、ネットで話題になっていたので記憶していました。アニメの空想の建築物を実際に造るとすると、どんな技術を使って、費用がどれくらいになるのかを見積もるということで、当然、実際に造るわけではなく、それで、どういうドラマに成り得るのかというところが、疑問であり、興味を引かれるポイントでもありました。

ポイントは、ファンタジー営業部の面々が広報のスタッフであるというところでしょうか。見る前は、実際に工程を考え、見積を積算するのは、それぞれの部門のプロたちだと思っていました。「私たちなら、こんなことができる」と、それぞれの技術とプライドをかけて、どんどんアイデアが出てくるのかと…。

まったく違いました。

もちろん、メンバーの中には、それまでに技術畑や営業畑を経験している者もいるのですが、どちらかというと、素人が一から勉強をしていく流れになります。手分けをして現場に赴き、専門家たちに相談していくなかで、土木建築そのものの面白さに触れることになります。それが、土木建築という仕事に馴染みのない私たちにとっても、うまくこの世界に入っていけるという効果を生んでいます。最初は、意味の分からないセリフもありました。「りゅうべい…」とアタマの中で「?」が浮かんでいましたが、あとから「ああ、立米、つまり立方メートルね」と気づいたりもしました。

スタート時点では、後ろ向きだったメンバーも、その道のプロたちの知識と技術と情熱が伝播し、そして、くだらないと思っていたこのプロジェクトをひそかに応援している人たちがいることを知っていくことで、仕事に対する姿勢が変化していきます。実際に何かを作るわけではありませんが、確実に「ものづくりエンターテインメント」です。つまり、土木建築に限らず、何かを作ることに関わっている人ならば、どこか心に響くつくりになっています。とても凝ったエンドロールを見ると、映画という巨大プロジェクトにかかわる人々にもしっかりと敬意を払っているようにも見えて、「映画だって、同じだよね」ということを表現したかったのかなと感じました。

本作の主人公は、高杉真宙演じるドイだと思いますが、それ以上に登場場面が多いと思われるのが、おぎやはぎ小木演じる上司のアサガワ。このアサガワは、4つのコミュニケーションタイプでいうと典型的なプロモータータイプで、自分だけは楽しそうに、思いつきでがんがん話を進めるが、人の話は聞かない。これも、観客に対しては、メンバーに共感させる効果を生んでいると思います。ただ、このアサガワ、仕事ができないかというと、決してそうではなく、事前の根回しはしっかりとして、ダイナミックプロダクションへの許諾もすっととってくる、自分の片腕になるチカダをちゃんと味方にもつけている、ということで、上司としての仕事はちゃんとやっているんですよね。無茶ぶりだけの人間ではありません。このあたりのバランスは上手いです。

一方で、気になったのは、岸井ゆきの演じるエモトの恋愛要素。この物語に必要だったのかな? 実際にはそういうこともあるかもしれませんが、唯一の女性メンバーにそのエピソードを担わせることによって「女性の行動原理が恋愛感情」と言っているようにも見えます。別のアプローチの方がより広い共感を得ることができたのではないでしょうか。