映画「ミッドサマー ディレクターズカット版」

【作品の見え方は変わらないが、人物描写がより濃厚。クズはよりクズに】

通常版を事細かに覚えているわけではありませんので、どのシーンが追加されたのかはハッキリとは分かりません。少なくとも、学生同士の会話がいくつかと、夜の演劇型儀式のシーンが追加になっています。

学生同士の会話では、それぞれの性格や立ち位置などのキャラクターがより明確に分かるようになりました。

マークは、ただただ、どうしようもなくバカ。

ジョシュは、博士論文のことしか見えていない。

ペレは、静かに、そして周到に彼らを巻き込む。出発前にクリスチャンとダニーのやり取りを見る彼の視線は、計画が前進していることに対する手応えを感じた表情に見えます。

そして、クリスチャンは、ダニーに対しても、そして学問に対しても、不誠実というか「クズ」。通常版では、クリスチャンがホルガのことを論文に書くと言い出したのが、かなり唐突でした。ジョシュとは違って、いい加減な学生だという印象は受けました。ただ、今回の追加シーンにによって、「いい加減」というよりは、アカデミック方面においても「クズ」という見え方になっています。

また、通常版では、ダニーはダニーで「面倒くさい女」という印象もありましたが、本作を見ると「やはり、面倒くさくしてるのは、お前の問題だよ、クリスチャン」と言いたくなります。誕生日ど忘れ事件はもちろんですが、ダニーが抱える問題をダニー本人の責めであるかのように押しつけたり、他のことを言い訳にしてダニーに寄り添うことを拒否したり、マヤとの件も「薬を飲まされて、よく分からない状態で」ではなく、ビビりながらも興味津々だった模様。酷いものです。

夜の演劇型儀式のシーンの追加では、その後に、ダニーがジョシュに睡眠薬を貰おうとする経緯が説明されているわけですが、これは、昼間にあれだけ気持ちの悪いことがあったのだから、カットされても違和感を感じることはなかったところです。面白いシーンではあるのですが。これをカットしたのは、やはり眩しい陽の光の中でのシーンを中心に展開したかったということかと推測します。

ただ、ディレクターズカット版を見ても、通常版で感じた疑問「90年に一度というのは、夏至祭りのどの部分なの?」は、解消されませんでした。アッテストゥパンは「必要になった年にはやる」ということが分かったので除外。また、ペレが、前々からクリスチャンの写真をマヤに見せてその気にさせていたということなので、彼の計画はかなり周到に準備されていたということになる。やはり、ペレが、「いつ行くの? 今でしょ」的に4人を巻き込むためについた大嘘という説が、自分の中ではさらに濃厚になりました。