映画「宮本から君へ」

原作未読、ドラマも見ていない状態で鑑賞。 

冒頭、特にこれまでのダイジェストも何もなく、いきなり本編に突入。でも、ちゃんと、宮本がどういう人物なのかは、分かるようになっています。冒頭は、明らかに喧嘩帰りの宮本がボロボロの姿で登場。その後、会社で部長に説教され、先輩に励まされます。

いちばん分かりやすい単語は「愚直」でしょうか。 後先のことは考えず、空気も読むこともなく、今思ったことは即行動する。なかなか今の社会では生きづらい人間だとは思いますが、部長や先輩とのやり取りを見れば、周囲からはある程度理解されているように見えます。これがないと、どんどんヤバイ方向に進んでもおかしくない感じなので、安心して見ることができました。

そして、恋人である靖子を連れて実家に帰り、結婚することを報告するという流れ(この中でも、ちょっとワケありであることの振りがあります)。

私たちは、いったい何が起きているのか分かりませんが、その後、時間軸がぐちゃぐちゃになって、話が行ったり来たりしながら、靖子との馴れ初めや、なぜそんなにボロボロになったのかが、明らかになっていくという展開。

もう、蒼井優と池松壮亮という2人の俳優の、逃げ場のない金網デスマッチです。涙も、鼻水も、ヨダレも、血も流れっぱなし。

宮本がボロボロになったのは、「絶対に勝たなきゃいけねぇ喧嘩」に挑んだ結果なわけですが、本当に戦っていた相手は靖子だと、私は思うのです。本気と本気をぶつけ合い、退いたら負け、たじろいだら負けな、ガチンコ勝負。 観ているこちら側も、ヘトヘトになりました。


宮本のように生きていくことは難しいけれど、誰の中にも小さな宮本はいるのでしょう。だからこそ、30年の時を経て、こうやって映画になるのだと思います。 

「あなたの中の、宮本はどうだい? やりたいことができなくて、腐っていないかい? ちょっと暴れさせてやってもいいんじゃない?」そんなことを問いかけられているような気がしました。

だから「宮本から君へ」なのですね。

上映中、ずっと「音響のボリュームがデカ過ぎるのではないか、この劇場は」と思いながら観ていたのですが、エンドロールで納得。この曲を、この音量が聴かせたかったということですね。