映画「クリード 炎の宿敵」

「クリード 炎の宿敵」を観てきました。

クリード チャンプを継ぐ男」の続編であり、かつ「ロッキー4 炎の友情」の続編ですね。本作を見る前に、この2作は見ておいた方がいいと思います。

前作「クリード チャンプを継ぐ男」が、「自分を何者であるかを承認をする物語」だったとすれば、今作は「一人前の男になる物語」です。メインのストーリーは、とても単純明快。その伴奏としていくつかの親と子の物語が流れていて、これが深みを与えているというところでしょうか。

前作の熱さから一転、前半はかなり抑え気味の演出です。「ちょっと大丈夫か?」と思うほど。 しかし、後半は、ぐいぐい盛り上げていきます。

お決まりの、「これ、ボクシングに関係あるの?」という謎の特訓シーンだってあります。ここで「アイ・オブ・ザ・タイガー」や「バーニング・ハート」が流れれば、「うぉー、キタキタキター」となるところですが、流れないのですよねぇ。そこまで、おっさん接待はしてくれません。クリードの物語なのですから、当然です。

ドラマの濃度としては、敵役であるドラゴ親子の方が強かったですね。過去作で冷徹な殺人マシーンだった父ドラゴは、ロッキーに負けたことで、不遇の人生を送ることになる。そのリベンジを果たすべく、全てを息子に捧げて徹底的に鍛え上げてきたんですね。ときには、どこかのアメフト部監督の「やらなきゃ、意味ないよ」的な指示まで出す。完全に私怨です。元嫁ブリジット・ニールセンまで投入してドラマを強化してきます。彼女が、また、いい感じに酷い女です。

やたらデカくて強い息子ヴィクターですが、ボクシングではないあるシーンで「弱さ」が見えるところもいいですね。ちょっと、応援したくなります。

ここまで、相手側にドラマを持ってくるからこそ、それを超越しなければならないクリードとの対比が際立つわけですね。

クライマックスでは、
「What's your name?」
「I'm Creed!」
という日本の中学生でも分かるようなセリフが、あんなに熱く、感動的に聴こえるとは思いませんでした。前作では、父の名前を名乗ることに躊躇のあったアドニスですが、本作では自分の名前として心の底から叫ぶのです。これは、アガるしかありません。 

その道を究める修行の段階を「守破離」と言ったりします。 「クリード チャンプを継ぐ男」が師匠に教えを請い、修得する「守」の段階だとすると、本作は、いったん師匠から離れることでその教えを俯瞰で見直し、対戦相手からも学んで心技を発展させる「破」でした。

「クリード3」があるならば、また観たいと思います。でも、次は、ロッキーの死か、あるいは、もう死後の話になるのかも知れませんね。独自に新しいものを生み出すのが「離」ですから。


「It's your time」とは、つまり、そういうことでしょう。

蛇足ですが… つっこみどころとしては、体調の問題で飛行機に乗れないため、フィラデルフィアからロサンゼルスへの移動も鉄道で3日間かけてやってきたロッキーが、どうやってロシアまでたどり着くことができたのか?

そして、 最後に余談。2019年1月14日12:00~の回を鑑賞したのですが、ちょうど試合シーンで、アドニスが劣勢に陥ってるときに、ズズズズズーっと座席に揺れを感じました。茨城のほうで地震があったようですね。あまりにもタイミングが良かったので、まるで4DX的な演出のようでした(その後は、何事もなく終演まで上映は続きました)。