「ドゥ・ユ・ワナ・ダンス?」10/6夜公演(ネタバレあり)

ももクロ初のミュージカル「ドゥ・ユ・ワナ・ダンス?」 初日を見た後、どのように変化していっているのかが気になって、個人的に最後のチャンスである10月6日(土)に向けて、チケットを取ろうと頑張ってみました。ただ、当日券予約電話受付開始の前日10時は、ちょうど会議が入っていたのでアウト。仕事をしつつ、twitterで連番を募集されている方を見つけて、結局、10月6日(土)の夜公演をもう1度観てきました。 

明日の千秋楽を残すのみとなりましたので、ネタバレありの感想も残しておこうと思います(画像は、ニュースサイトへのリンクになっています。切れちゃったらごめんなさい)。 

↓初日の後に書いたネタバレなしの感想はこちら。

公演がスタートする前、まずはHPで物語のイントロダクションを初めて見たときは、ずいぶん重い話になるんじゃないかと心配でした。SUZUKIのCMをやってる4人が、交通事故で死んじゃうなんて、別の意味で心配な設定でもありました。

それはともかく、物語としては「AMARANTHUS」「白金の夜明け」の世界観を継承しているように感じました。「AMARANTHUS」が「起きて見る夢」、「白金の夜明け」が「寝て見る夢」ならば、「ドゥ・ユ・ワナ・ダンス?」は「魂が見る夢」でしょうか。輪廻転生をベースにしていますので「GOUNN」でもあります。

ただ、既存楽曲でも、ミュージカル用にアレンジされていますし、物語にあわせて、歌い方だって変わっています。例えば1曲目の「We are born」は、もともとはタイトル通り、まさに生まれ出るその時を歌った曲ですが、本作では、事故で命を失った直後ですので、「困惑」や「迷い」を表現する歌い方になっているのだと感じました。夏菜子も、たこ虹さきてぃが歌マネする、あの感じではありません。

ももクロ抜きで歌われるももクロ曲も、シルビアグラブさん、妃海風さんをはじめ本職のみなさんの手にかかると、まったく雰囲気が変わります。以前、公式twitterで稽古風景が流れていて、それだけでもかなりのインパクトがありましたが、当然、舞台ではそれを上回る厚みで迫ってきます。「圧倒される」というのは、こういうことなのでしょう。

楽曲だけでなく、ももクロが携わったさまざまな作品のエッセンスが、この世界の中に散りばめられています。

まず、自らは転生を拒みながら、生まれ変わった3人それぞれのところを訪れては、ダンスをやろうと働きかけるカナコの姿は、「天使とジャンプ」ですね。今回も、夏菜子は、他のメンバーとは別の次元の住人です。

転生した世界でのシオリは、結婚式直前でした。あんなにみんなに「玉井さんが一生ひとりでいられますように」と祈られていたのにもかかわらず(私は、このくだりは好きではありませんが)。ちょこっとだけ出演した本広監督プロデュースの映画「アニバーサリー」のエンディングが結婚式だったというのは、我ながらこじつけすぎでしょうねぇ。ただただ「ももたまい婚」のウェディングドレス姿をもう1回見たかっただけなのでしょう。大いに賛同するところです。ソロの「仏桑花」は、声質的に厳しいところはありますが、初日の公演よりも、2回目に聴いたほうが、各段に良くなっていました。

アヤカは、さおり先輩が引退した後の演劇部の2年生、先生も変わっちゃって…と明確に「幕が上がる」と重ね合わせていました。映画では、「さお先輩、大好き」が前面に出てましたが、いざ先輩が引退してしまうと、いろいろと悩み事が出てきたようです。大学に行ける程度に勉強はできるのに、演劇の世界に進もうという考えているところは、実際のあーりんが大学に進学せずに、ももクロ一本に絞ったところもと重なります。

そして、「幕が上がる」のがるるは看護師志望でしたから、レニの生まれ変わった世界も、やはり「幕が上がる、その後に」ですね。ちょっと、性格は変わっている気がしますが。パンツスタイルのナース服に眼鏡とか、制作陣の皆さん、よく分かってますねぇ。仲良くなれそうです。彼女がソロで歌う「希望の向こうへ」が抜群にいいです。もともと、れにちゃん曲ではありますが、とても舞台に映える歌声でした。さすがにソロコンを重ねてきただけのことはあります。

これらのソロパートには、必ず一人語りが含まれます。これは「幕が上がる」の「肖像画」ですよね。自分の言葉だけで、すべてを表現する。これは、前提を共有しない、初見のひとを相手にやるのは、かなり難しいことです。


この後、3人はカナコに引っ張られる形で、ダンス大会の決勝に向かおうとしますが、なぜか、アイドルのオーディション現場に転送されてしまいます。



4人は、アイドルグループ「HEAVEN」として、活動してくわけですが、ここからは、現実のももクロのストーリーと重ねられています。まあ、楽曲もももクロですしね。路上ライブからメジャーデビュー、ドーム公演まで急成長する一方、1人、2人とメンバーが欠けてもいきます。


中でも気になるのは、長身でキノコっぽいショートカットのムツミ(二橋南)です。少し低いというか強めの歌声で、ピンキージョーンズでは、あのパートを歌っていましたよね。絶対、誰かさんを意識していますよね。ただ、生々しくなりすぎるからか、極端に背が低い子は見当たりませんでした

メンバーが脱退を告白するくだりでは、その話を聞いたカナコは微笑んでいました。さらに「それが正解!」とエールを送っていました。ここは、夏菜子本人とは違うところです。実際は最もダメージを受けていたのが夏菜子です。脚本の鈴木さんや、演出の本広監督が、夏菜子が背負っているものを少し軽くしてあげようと考えたのではないかというのは、ただの妄想です。時を経て、今は夏菜子も「それが正解!」と思えるようになっているのでしょうか。夏菜子はどういう思いで、この場面のカナコを演じていたのか、尋ねてみたいところです。

恐らく、このHEAVENの評判がいいのでしょうね。ここに、アドリブコーナーが仕込まれていました(初日は、なかったと思うのですが)。 妃海さん演じる山上マネージャー(これも、川上さんのパロディですね)から、回替わりで誰かが無茶ぶりされるといもの。私が見た回では、「アイドルは、ただの水を飲むときでも、お花畑にいるように可愛く飲むもの。シオリはそれができる」と。シオリちゃんは、石出奈々子のジブリネタのように「あはははは、あははは」と腕をゆらゆらさせ、お花畑感を出します。普通ならば、それでひと笑いがあって終わりなのでしょうが、アヤカがそれを拾って、自分でもやり始めます。そうしたら、みんながやり始めて、シオリちゃんとしては一層恥ずかしいことになっていきます。そこから、「楽しんでるところだけど…」と、本題である脱退話に引き戻すという、見事な展開。アドリブ展開でここまでいくのは、チームとして、ものすごく「いい感じ」になってきているのだと感じました。

今回、モノノフの中でもミュージカルということで干した人もいるでしょうから、ももクリあたりでHEAVENにゲスト出演してもらって、1曲ぐらいやってくれないかなぁと思ったりします、マジで。

 

ということで、ライブパートもめちゃめちゃ楽しいのですが、ちょっと気になるところもあったりします。

彼女たちがアイドルを演じるというのは、もうこれまでの作品で、既視感ありまくりです。そう頻繁に舞台に挑戦する機会がとれるわけではないのですから、もっと別のアプローチがなかったのかな?と思うのです。 

しかも、歌い踊るのは、ももクロの楽曲です。ももクロが、自分たちのコピーグループを演じるようなもの。特に「怪盗少女」はナシでしょう。あの世界に、ももクロはいないのかもしれませんが、それでも彼女たちはHEAVENであって、ももクロではないのです。別に「怪盗少女」を特別なものとして神格化しているのではありません。逆にHEAVENが可哀想だということです。

そのあたりが、どうもモヤモヤが残ったということです。


この後、徐々にカナコの魂が弱まります。この世界はもともとカナコの夢のようなもの。カナコの魂が消滅すれば、この世界も終わり、3人も元の世界には戻れなくなります。ミーニャや坂上たちは、他の3人を取り込み、事態をなんとか収めようとします。

もちろん、4人は、4人のHEAVENを全うする道を選びます。ここで「黒い週末」で両陣営が対決することになります。天使チームが歌い踊っているパートでの4人のリアクションが、なかなか面白かったりします。そしてアヤカが、まるであーりんのように、ぐいぐい押していきます。ここでは、天使チームは黒い衣装です。まあ、HEAVENの4人にとっては倒すべき相手かもしれませんが…と思ったところで気づきました。この世界がカナコの夢のようなものなのだから、カナコ個人にとってのイメージがそのままビジュアルにも表現されているということなのだと。最初の天国のパートでは白い衣装だった彼らが、この時点ではカナコにとっては黒い存在に見えているということなのだと理解しました。

最後には、夏菜子自身も転生を受け入れることになります。 辞めていったHEAVENのメンバーがアイドルとは別の道に進んで行ったこと、そして3人も元の転生先の世界で、悩んだり、つまずきつつも何とか自分の道を進もうとがんばっていたのを思い返し、どんな世界に転生しても、そこで自分にとってのダンスに一生懸命になればいいと思えたのでしょうね。

ここが、先日のエントリーで、「歌い踊り続けることを辞めたアイドル、歌い踊り続けることができなかったアイドルたちに対する、一つのエールでもあるのではないか」と書いたところです。


締めの1曲「HAPPY Re:BIRTHDAY」は圧巻ですね。個人的には、本作のもう1つの主題歌だと思います。ある意味、この曲を舞台化したのが「ドゥ・ユ・ワナ・ダンス?」と言ってもいいぐらい。 ただ、みんながワントーンの衣装で別々の方向を向いて直立して歌うというのは、どこかの舞台で見たことのあるような演出ではあったのですが…。 


そして、ラストシーン。

3人とすれ違い、振り返って追いかけるカナコの、表情の変化が最高でした。ここは、アップでもう1度確認したいところです。

どうやら、本日10月7日の公演には、カメラが入っているとのこと。期待して待ちましょう!

終演後は、感動で滂沱の涙…というよりも、ウルウルしつつも膝をポンと叩いて、すくっと立ち上がるような、ももクロらしいミュージカルだったと思いますよ!