映画「LAMB/ラム」

【一番困惑したのは、犬でしょうね】

アイスランドの山間に住む羊飼いの夫婦イングヴァルとマリア。ある日、2人が羊の出産に立ち会うと、産まれてきたのは、他の仔羊とは明らかに違う「何か」だった。子どものいない2人は、その「何か」を"アダ"と名付け、自分たちの子のように育てることにするが…という物語。

クリスマス、羊飼い、マリア、ペートゥル…ということで、「キリスト教のバックグラウンドが必要なやつか…」と構えながら、鑑賞。

あらすじでは「何か」と表現しましたが、予告編で、その姿は明らかになっています。キリスト教では、悪魔の姿。でも、エジプトでは神の姿でもありますね。私たち日本人は、桃太郎やかぐや姫の物語で、普通ではない子ども(こちらは人の姿だけど)を拾ってきて、自分たちの子どもとして育てるという物語に馴染みがありますが、海外の方だと、受け取り方はちょっと違うのでしょうか?

アイスランドの大自然と、不気味な雰囲気の中「なんだか、ヤバいものを見ている」という気持ちになるは確実です。

特に、マリアがある行動に出てからは、これは後々何かしらの形でしっぺ返しを食らうよなぁ、と、悪い予感しかありません。イングヴァルの弟が加わり、彼自身もかなり訳アリの存在のようだし。アダ自身も何かを感じ取っているようだし。彼が何を見ているのかに注意しておくといいと思います。

猫だけは、「我、関せず」という感じなのが、とても平和でよかったです。

一番困ったのは、犬でしょうね。ヒトは犬にとっては飼い主ですが、ヒツジはその飼い主の指示に従って自分がコントロールする相手。犬から見たら「え? あ…、こ、こいつは、どっちなんだ???」と、困惑したことでしょう。そのうえ、後々あんなことになるなんて…。

そういえば、この夫婦は、犬と猫には名前をつけていたのでしょうか。名前を呼んでいるシーンはなかったような気がします。そう考えると、「アダ」と名付けているというのは、やはり、とても特別なことですね。

ラストは、ぽーんと終わってしまいますが、「投げっぱなし」というわけではなく、しっかりとオチがついたと思います。「どうやって、アダが産まれてきたのか」ということを考えると、スジの通った展開。冒頭のシーンはつまり、そういうことだったのか!と分かります。そして、因果応報というか、きれいに立場が逆転するわけで、とても、真っ当なストーリーだとも言えるのが、面白いところです。

最後に、アダが、ちゃんと寄り添っていたということは、夫婦に問題は大アリだけど、それでもアダにとっては家族だったということでしょう。それだけでも、充分じゃないですか。

そして、実は、マリアは妊娠してるのでは?と思ったりもしたのでした。