映画「ブレット・トレイン」

【誇張しすぎたトンデモNIPPONのアクション・コメディ】

殺し屋の「レディバグ」は、日本の高速列車の中でブリーフケースを奪うよう指令を受ける。奪って降りるだけの簡単な任務だと思っていたが、列車にはなぜか他にも殺し屋が乗り込んでいるうえ、列車を降りようと思ったら次々に自分を狙う殺し屋に阻止されるはで、どんどん巻き込まれていく…という物語。

ブラッド・ピットのスタントダブルをつとめていたデビッド・リーチが、ブラッド・ピット主演のアクション作品を監督。しかも、ブラッド・ピットは、映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」で、スタントマンを演じていたという、なかなか面白いめぐり合わせ。そういえば「プランBはないのか?」なんて、楽屋落ちネタも仕込まれてましたね。

原作小説は未読です。伊坂幸太郎の小説は何作か読んだことがありますが、あまり自分には合わないかなぁという感想。「人物」というより「キャラ」が重視されていて、セリフも言葉が浮いているような印象がして、あまりしっくり来ませんでした。ただし、それゆえに、今回のような映画化には向いているのかもしれません。

予告編の時から、「これは…?」と思っていた日本の描写。これまでいろんなトンデモ日本を見てきましたが。本作については「忠実に日本を再現するつもりは毛頭ない」という印象です。おそらく、いろんな資料を揃えることもできるし、忠実に再現することもできるのでしょうが、「この作品の日本はこれだ!」「どうせロケできないんだから、俺たちの好きな日本を作らせてくれ」と開き直っているのだと思います。あれです、ハリウッドザコッショウの「誇張しすぎた●●」のように、似せる気はないけど、面白いことをしようと思っていることに間違いはない。

だから、「え?夜行の新幹線?」とか、言い出したらキリがないので、そこはいいとしましょう。

まず、最初は、登場人物が多すぎて、誰が何の目的で何をしようとしているのか、さっぱり分かりません。でも、これは、登場人物も同じで、何に巻き込まれているのかほぼ状況が分かっていないので、徐々に明らかになってくる楽しみはあります。

もちろん、偶然、みんなが乗り合わせたはずもなく、それぞれのつながりが明らかになっていく、ミステリー的な面白みもあります。相当、ぶっ飛んでいますが。

睡眠薬や銃の仕掛けなど、「お、これは後々どこで効いてくるのか?」と期待しているものが、ちゃんと活躍(?)する場面があるのもいいです。このあたりは、原作の力によるものでしょうか。

そして、原作未読なので分かりませんが、きっと後半は全然原作とは違うのだろうと推測しています。キレイにまとめようなんてことは一切考えていなくて、これでもかこれでもかとトッピング盛り盛りです。日本のほうじ茶をフラペチーノにした上に、ホイップやキャラメルソースやらチョコチップやらでカスタマイズした感じ。

そんな中で、真田広之演じるエルダーは、あまり誇張がないので、逆に特異な存在。日本刀じゃなくて、仕込み杖から長ドスというところも、ヤクザ描写に対するこだわりを感じます。

そして、ある意味、もっとも巻き込まれている感じがあるのが、レモン&タンジェリン(みかん)のコンビ。本作の、「コメディ」部分の多くは彼らによるもの。もう、2人の掛け合いをずっと見ていたい…というか、2人がメインのスピンオフを見てみたい。

あと、事前に「きかんしゃトーマス」のキャラクターを押さえておくと、さらにこの作品を楽しめます。