映画「ジュラシック・ワールド/新たなる支配者」

【恐竜は主役ではない?】

前作のラストで、アメリカ本土に解き放たれた恐竜たち。「次作は『恐竜大戦争』になるのか」「人の時代が終わり、再び恐竜の時代がやってくるのか」と、期待していました。てっきり、捕食者の頂点の座を恐竜たちに奪われ、恐竜たちが我が物顔で闊歩する中、人類はどうやって生き残っていくのか?みたいな話になるのだと思っていました。

邦題は「新たなる支配者」ですが、原題は「Dominion」。「支配」とか「統治」といった意味で、「うんうん、それそれ」と思っていました。

冒頭、これまでのシリーズのおさらいと、前作の後の状況を、ドキュメンタリー番組風にまとめたものが流されて、ちょっと予想とは異なる展開になっていました。

人類にとって危険な恐竜は保護され、そのほかの小型の恐竜たちは世界に広がり、人類と共生しているのです。もちろん、いいことばかりではなく、アンダーグラウンドの恐竜ビジネスなんてのもあったりするわけですが。これで、ドラマが展開するの?と、若干拍子抜けします。

そこで、出てきたのが、恐竜をイタリア・ドロミティに集め、研究を任されたバイオシン社です。ジュラシックパーク1作目のインジェン社のライバル企業で、恐竜の胚を盗み出そうとした会社。出てきた瞬間から、悪役決定みたいなものです。

だいたい、ドロミティの施設の設計って、なんかおかしくないですか? 緊急時は、恐竜たちを施設に集めることになっていましたが、ケージもなく一つのところに集めたら、肉食恐竜が、入れ食い状態で食い荒らすだけですよね。集めてどうするつもりだったのでしょう? 渓谷の真ん中に施設を置くというのも、よく分かりません。普通に考えると、高い位置かつ敷地の端っこにおいて、外部との出入り口を確保しますよね。大型恐竜を扱っているのに空路じゃないと入れないって、不便すぎます。BCPも何もありゃしません。

結局、こいつらのやらかし、いや、CEOルイス・ドジスンひとりのやらかしがすべて。

特に、前半、ほとんど恐竜が活躍しません。代わりに大量に発生しているのが、巨大イナゴ。もう、こいつらが新たなる支配者になるのではないかという勢い。とにかく、生理的に虫を受け入れられない人は見ないほうがいいです。でも、巨大イナゴなら、食糧を荒らされても、こいつらが食糧になるのではないかとも…。

それでも、旧作のメインキャストを、ゲストやご挨拶程度の顔見せ出演ではなく、新作組、旧作組の2つのトラックでストーリーを展開していくという点については、成功していると思います。物語の最初と最後では、彼らの人生にもちょっと変化があるようです。

ただし、結局、悪いやつらの悪事の話で終わってしまっていて、人類と恐竜の話ではなくなっていました。神の領域に踏み込んだ人類の生命倫理みたいな話は、吹っ飛んでしまいました。「人類と恐竜が共生する社会」も、限定的とはいえ冒頭で実現できているので、ラストの落とし方では満足できません。悪いやつらが、ダメになっただけで、あとは何も変わっていないのです。完結編なのですから、ネガティブでもポジティブでもいいので、何かしらの答えは欲しかったところです。もしかしたら「答えが出せないなら、クローンだとか手を出しちゃいけない」という答えなのでしょうか。