映画「キングダム2 遥かなる大地へ」

【主役は…】

王弟の反乱から王都を奪還した嬴政。いよいよ、秦国による中華統一へと動き出そうというところ、その動きを察知したのか、魏の呉慶将軍率いる大軍が秦へと進攻し、丸城を奪う。迎え撃つ形で、麃公率いる秦軍が出陣。戦いの地は蛇甘平原。信も歩兵の1人として、初陣に臨む…という物語。

原作未読。前作も先日の地上波放送でやっと見たという程度です。漫画原作の邦画大作としては、かなり成功していると感じたので、劇場で「2」も観てみようと思ったのでした。

まず、物語としては、ほぼ蛇甘平原の戦いが占めていて、ほとんど話が進んでいません。いったい、これから何本作るのだろう?と思ってしまいます。でも、端折ったら端折ったで、「ダイジェストかよ」と言われてしまうので、原作モノは取捨選択が難しいところですよね。しかも、一応、歴史の流れもあるので、換骨奪胎もしづらい。

伍の戦い、歩兵と騎馬隊と戦車隊、多勢に無勢、丘陵と平原、勇猛と無謀、戦略と戦術、戦況の判断、総大将の一騎打ち、とにかく今回は、物語の展開よりも「戦」を見せたかったということでしょう。

主人公・信は、歩兵として初陣に臨み、相変わらず直情径行型で突き進みます。武功をあげ、伍に収まるような存在ではないことを、周囲にも認められますが、変化・成長という点では、物足りなさがあります。まあ、彼が「今のままではダメ」ということに気づいたのは、大きな一歩かもしれませんが。

その点では、本作の主役は、清野菜名演じる羌瘣だと言ってもいいかもしれません。もちろん、彼女はアクション俳優でもありますから、舞うような剣技の体のキレの美しさなどは言うまでもありません(トーンタンタンの表現は「?」でしたが)。まっすぐな信と、弧を描く羌瘣の対比もいいです。

キャラクターとしても、本作での戦いを通じて、ハッキリと変化しています。もし、彼女の過去のエピソードがなければ、ただただ戦の流れを追う展開になっていました。羌瘣が、この戦いに参加していなければ、彼女は仇討ちに失敗して野垂れ死ぬか、成功したらしたで生きる目的を失うことになっていたはず。しかし、今回の戦いを通じて、自分の力を活かす場所があることを知った彼女は、仲間のもとに戻ってくることになるのでしょう。

あと、プロレスラー・真壁刀義の台詞回しに、まったく不自然さがなく、「これは俳優の仕事が増えるぞ」と思っていたら、すでにいろんな作品に出ていることを後で知りました。失礼いたしました。

そして、総大将の一騎打ち。なぜ、数の上で圧倒的に優位なのに、あえて一騎打ちに持ち込むのか。そのまま、数にモノを言わせて潰していけばいいのではないかと思ってしまいますが、その疑問にも答えてくれます。総大将が背負うものの大きさを感じるところです。ただ、もうちょっとネットリと戦ってもよかったような…。盛り上がりどころではあるのですが、淡泊な印象でした。

まあ、渋川晴彦の縛虎申隊長、クセが強すぎる大沢たかおの大騎将軍も含め、ベテラン勢が美味しいところを持って行っているということに間違いはありません。

原作も未完なので、どこまで映画化できるか分かりませんが、本作の状況から想像すると、世代交代というか、信が、将軍とはいかないまでも、将として一人前になるぐらいまででしょうか。その中で、何かしらの形で、中華統一を果たした映像も挟み込まれるといいですね。