映画「ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス」

【まるでゾンビ映画だな…と思っていたら、まさかの…】

ドクター・ストレンジの前作は観ていますが、MCUについては、観ていない作品もいくつかあるというレベルです。

基本的には、この作品だけでも楽しめるようになっているとは思いますが、ドラマシリーズのワンダビジョンを観ていないので、たぶん分かっていないことも多そうです。なぜ今回、ワンダ・マキシモフがヴィラン「スカーレット・ウィッチ」として登場するのか、なぜ子どもたちとの生活を求めているのか…といった背景は、ぼんやりとしています。

ただし、ワンダとスティーブンは、似ているところもあるんですよね。ワンダが、自分の宇宙にはいない息子たちを求めて、別の宇宙の自分の息子たちと接触しようとしているのに対し、スティーブンは自分の宇宙で振られてしまったクリスティーンに未練タラタラで、別の宇宙のクリスティーンには、これまでとは違った関係性を築こうとします。別の宇宙で何かをやり直そうというところは共通しています。

今回、サム・ライミ監督だということをすっかり忘れていて、「あれ? 今回、怖がらせも、驚かせも、ホラー映画の演出じゃない?」「おっと、こんなにグロかったっけ?」と思いながら観ていました。途中で、「あ、そういえば…」と思い出しました。娘と一緒に観に行ったのですが、「ひっ」と声が出るくらいビビってました。あとから、「ゾンビ映画とか撮っている監督」と教えたら、合点がいったようです。

もともと、「死霊のはらわた」も、呪いの書を読み上げて、死霊を呼び出してしまう話ですから、魔術とは相性がいいってことですね。ただ、残酷描写は、ズバリそのものを見せずに、例えば、血塗られた盾を見せることで、何が起きたかを表現したりして、よかったです。そして、クライマックスの展開は、思わず笑ってしまいました。「まるでゾンビ映画」じゃなくて、「ゾンビ映画そのもの」じゃないか!

もちろん、そういう怖がらせ、驚かしばかりではありません。

ドクター・ストレンジは、アベンジャーズの一員ではあるものの、どちらかというと集団には馴染まない人。極端に言うと、独善的で、他人を信用しないタイプ。アベンジャーズでも、単独での行動が目立ちます。元恋人のクリスティーンも、その点で「この人とは、やっていけない」と感じたようです。

これに呼応するように、ラストの展開では、ストレンジは「信じて任せる」という、これまでにない戦い方を選択します。1つの変化ですね。

そういう意味では、もう1つ変化がありました。彼は、目的のためには犠牲は厭わないという考え方も持っています。エンドゲームでは、大きな犠牲を払いながらも、サノスを倒すことのできる唯一の道を躊躇なく選びました。しかし、今回は、最善だと思われるプランを放棄し、未知の可能性に賭けるという選択をします。

この変化を踏まえて、次回作があるのならば、どんな展開になるのだろうと思っていたところで、ラストでお決まりのサプライズでした。「あれ誰だ?」と思って調べてみたら、あのまま話が続くのならば、1作目から続くようなエピソードもありそうで、3部作完結といった感じになるのかな?と期待させてくれます。

あと1つだけ、どうしても、ひっかかるところがありました。特に何も悪いことをしていない一般人が、ストレンジに酷い目にあうというもの。他の人にはない能力・技を持っているヒーローが、悪戯のようにその力を一般人に使うことに、よい印象は受けません。サム・ライミ作品ではお決まりのギャグらしいのですが、ちょっと笑えませんでした。