映画「キングスマン:ファースト・エージェント」

【最強の「家政婦のミタ」ネットワーク!】

前作までの流れとは打って変わって、独立諜報機関「キングスマン」創設の物語。

これまでの悪ふざけ満載の展開とは異なり、かなり重厚でシリアス。第1次大戦のヨーロッパが舞台ということで、途中「1949 命をかけた伝令」を観ているのかと思うぐらい戦争映画成分が濃ゆい。

前作までの過激で不謹慎も厭わず…というところに期待すると、「これじゃない」と思ってしまうかもしれません。でも、もともと歴史の「実」の裏側を「虚」で彩って面白く…というタイプの作品は好き(「X-MEN:ファースト・ジェネレーション」とかも好き)なので、私としては「大いにあり」でした。

サラエボ事件など、ヨーロッパの歴史を押さえておいた方が、より楽しめることでしょう。実在の人物もたくさん出てきます。イギリス国王、ドイツ皇帝、ロシア皇帝の配役は、ちょっとふざけてますが。

今回、数少ない悪ふざけパートの大半を担うのは、怪僧ラスプーチン。コサックダンスを取り入れた格闘アクションをはじめ、予想外の性癖だったり、実際に不思議な力を持っていたり、なかなか死んでくれなかったり、キングスマンらしさが溢れていて、とても魅力的です。それに比べると、黒幕がちょっと…という気はしますが、それはそれでバランスはよかったと思います。

なぜ「キングスマン」のコードネームが、アーサー王の物語から来ているのか。ただの金持ちが道楽でやっているわけではなく、知性と教養と勇気と財力と地位がある人のノブレス・オブリージュなんですね。そして、何よりスタイリッシュ! 決まり文句の「マナーが人をつくる」が、意外なところで出てきたのは、驚きでした。

ポリーの存在もいいですね。初登場から、只者ではない感まる出しで、オックスフォード公との関係も匂わせてきます。ただし、ちゃんとスジを通すところがとてもいい。そして、彼女の使用人ネットワークこそが、今回の作戦の最大の肝になっている。まさに、諜報活動です。

ちょっと残念だったのは、組織がスタートする前の話なので、キングスマンらしい奇想天外なガジェットの登場がなかったところ。ショーラにクルマの整備などもさせて、ガジェット担当として、その時代なりのスチームパンク的なオモシロアイテムを作ってほしかったですね。

ファースト・エージェントからの続編も作れそうな展開でしたが、結局、第2次大戦に突入してしまうわけで、キングスマンの活動がうまく機能しなかったということになりますから、また重い展開になってしまうのでしょう。それでも、マシュー・ボーンの解釈による日本版のスパイ=忍者が出てきたりするのであれば、見てみたい気はします。