映画「ライド・ライク・ア・ガール」

【レースも人生も、隙間を見逃さず、ぐいぐい押し込む!】

1日5本映画鑑賞の1本目です。

調教師の父をはじめ、家族のほとんどが競馬に携わっている競馬一家の10人きょうだいの末娘ミシェルが、男性優位の競馬業界や、落馬による大怪我を乗り越えて、オーストラリアの最高峰レースであるメルボルンカップにおいて、女性ジョッキーとして初めて優勝を勝ちとるという実話を元にしたお話。

はい、結末を言ってしまいました。いいですよね、実話なんですから。知っていても、十分に楽しめます。

その時の報道がこちら。2015年と、つい最近の話です。

この道でしか生きていけない人の執念の物語です。ストレートに胸を熱くさせる作品でした。

よく考えたら、競馬って、男女が同じフィールドの上で戦う、数少ないスポーツの1つですよね。しかも、一般的に体重が軽い方が有利とされていますから、小柄な女性でも十分戦えるはず。

でも、劇中では、完全に男性が競馬界を支配している様子が描かれています。彼女がよい成績を上げても、次のレースで騎手に選んでもらえるのは下位の男性だったり、そもそも競馬場に女性ジョッキーの控室がなかったり、馬に乗せてほしいとトレーナーにお願いしたら、露骨に性的ハラスメントを受けたり、酷いものです。

メルボルンカップのようなビッグレースは、女性は弱いので勝てない…と。じゃあ、「強い」って何なんだ?

ミシェルは、もともと負けん気が強い性格ですが、そんな向かい風を受ければ受けるほど、強くなっていくように見えました。彼女は、生まれてすぐに母親を事故で亡くしているため、お父さんの影響を最も色濃く受けて育ってきているんですよね。ある意味、そっくり。でも、同じように頑固だから、父娘で衝突してしまうんですよね。

レース中は、父の教え通り、忍耐強く、目の前に隙間ができるのを待ちながら、ここぞというところで、果敢に突っ込んでいきます。でも、その「ここぞ」というポイントが、他の人とはちょっと違うようで、何度となくトラブルを起こします。クルマを運転するシーンが何度かあり、そこでもポールにぶつけたりしますから、少々強引にこじ開けるタイプであることは間違いなさそうです。それぐらいしておかないと、「女性だから、強く出れば折れる」と周囲から軽く見られてしまうということもあるのでしょう。

そして、落馬によって頭蓋骨骨折、選手生命どころか、自分の名前のスペルも言えない、日常生活もままならない状態になってしまいます。ここでも、彼女を最も理解しているのは父親です。リハビリのシーンでは、クスっと笑ってしまいますが、「競馬馬鹿」同士(褒め言葉)だからこそのアイデアです。

クライマックスのメルボルンカップは、ゲートに入る前、マネージャーやシスターが馬券を買うシーンから、もうフライングで落涙です。私は、主人公が勝ちとる栄光よりも、その主人公を信じて応援する側に、気持ちを持っていかれるんですよね。

もちろん、レースシーンも圧巻です。団子のような状態で、ジョッキー同士が言葉を荒げながら、小競り合いを続けます。フォードvsフェラーリのように、立ち上がって応援したくなります。

結局、ミシェルは、誰よりも強かったということでしょう。勝負勘が強かった。勝利への執念が強かった。チャンスを待つ忍耐が強かった。競馬への愛が強かった。そういうことでしょう。

ラストに、実際の映像が挟み込まれるのはよくあるパターン。ミシェル本人のインタビューもありますが、やはり、相当負けん気の強い方のようで…(笑)。そして、1点「あれ?」と思ったことがありました。そして、エンドロールで確認してびっくり「あの役、本人だったのか!」と。まあ、どの役なのかは伏せておきましょう。

映画1日見放題の時間合わせでチョイスした本作ですが、これが放り出し物、まさにダークホースだったのでした。