映画「バースデー・ワンダーランド」

小学生女子が異世界に連れていかれ、世界を救う存在になるという、巻き込まれ型ファンタジー。まあ、よくある話といえば、よくある話。

結構、早々に異世界に連れていかれるので、最初は「え? 現世界パートが短くない?」と思っていました。異世界で大冒険することで、「現世界で抱える問題も乗り越える」系の展開だと思っていたので、もうちょっと現世界の物語も必要だろう…と。

でも、それでいいのだということで後々納得できました。そもそもアカネは、ごく普通の小学生女子なのです。極端にいえば、主人公は誰でもよかった。クラスメイトとのギクシャクした関係性も、よくある話です。程度の差はあれ、みんな経験するようなことです。それで、学校に行きたくなくなる感じも共感できます。無名性が大事だったのだと思います。

それでも、救世主はアカネでなければいけない絶対的な理由は存在しています。それは、さらっと描かれています。ここの描き方には、にんまりとさせられます。

物語の展開も、心躍るような大冒険があるわけでもなく、大きな葛藤や挫折、困難を乗り越えるわけでもありません。それを期待していた人には「つまらない」ということになりそうです。

でも、ごく普通の小学生女子が、自分にネガティブな状態から、前に進むために必要なことは、ちょっと別の世界を経験すること、他者に共感してみること…そんな話だと思えば、ちょうどいいサイズの物語になっているのではないでしょうか。舞台はファンタジーですが、基本的には、普通の小学生女子の日常を描いているのだと思います。

予告や宣伝番組で何度も聴いた、あの印象的な主題歌が、いつ流れるのかと思いながら観てましたが、「これ以外はない」という場面で、バーーーンと来ましたね。これには、アガりましたね。

ちょっと気になるのは、異世界の危機感があまり伝わってこないこと。水不足ということですが、結構豊かな生活に見えます。きれいな水の中を泳ぐシーンもあります。もっともっと深刻な状況を描いたほうが、王子に課せられたプレッシャーも、よく理解できたのではないでしょうか。

どうでもいいことではありますが、ちぃちゃんの店に、あのお尻ぷりぷり少年らしきフィギュアが置いてあったり、「full color」と書かれたポスターが貼ってあったりすることから考えると、もしかしたら、アカネのちょいダサめのTシャツは、詩暢ちゃんオマージュだったりするのかな?と思ってみたり…。