映画「ボヘミアン・ラプソディ」

私自身は、あまりQueenには強い思い入れがありません。 もちろん、いろいろな曲は聴いていますが、一番アタマに残っているのは、ノエビアのCM曲だった「I Was Born To Love You」(Queenではなく、フレディのソロ曲ですが)というレベルです。 

まず、興味深かったのは、レコーディングでの、DIY感あふれるさまざまな工夫。おそらく、現在はPCがあれば何でもできるのでしょうが、とてもアナログな工夫が満載です。「そんな、レコーディングでしか実現できないような仕掛けを詰め込んだら、ライブで表現不可能になるのでは」と思っていしまうぐらい。

でも、ライブはまた別物で。圧倒的な歌唱と演奏力でひき付けていくって感じでしたね。 しかも、ライブでの観客の反応から、次の楽曲を発想する(「We Will Rock You」の例のアレ)というのも面白かった。 改めて、聴き直したくなりました。

映画の主人公はフレディではあるのですが、Queenはフレディのワンマンバンドではなく、各メンバーの技術とアイデアが詰め込まれたバンドであることがよくわかります。 

それが、ラストの展開につながっていくんですね。 

フレディを描くうえで、どうしても触れる必要がある、人種の問題と、セクシャリティの問題は、過剰にドラマティックに扱うことなく、淡々と語られています。それでも、マイノリティとして困難と戦ってきたフレディが、アフリカ難民救済のチャリティコンサートであるLIVE AIDSで大喝采を受けるという、大きなストーリーにつながる重要な要素として、的確に挿入されています。 

楽曲だけでなく、Queenという存在そのものが作品だったんだなぁと感じました。 

この映画は、かなり事実からの改編があると聞きます。RollingStoneのサイトに、以下のような記事がありました(↓まあ、伝記映画であって、自伝映画ではないんだけどね)。

 結構大きいのは、「メンバーとの関係性は一度も崩壊していない」「LIVE AIDのタイミングではフレディはエイズ感染を知らない」というところでしょうか。 

ただ、LIVE AIDでのライブをクライマックスに持ってくるためには、この改編は成功していると思います。私も、泣きっぱなしで見ていました。

もちろん、これを「許せない」と断じるファンがいるのは当然です。

ただ、Queenという作品を原作にした映画ということだと考えれば、それもアリなのではないかと思いました。後から、YouTubeでLIVE AIDのライブを観ましたが、完コピのように再現しているようにみせかけて、実は、大きく削除されているものもあったりして、徹底的に観客が盛り上がるように工夫を凝らすという点では、ある意味Queen的なのではないでしょうか。