映画「イコライザー2」

イコライザー=「均衡を保つ者」は、悪を懲らしめて平和の均衡を保つ者というだけではなく、不当に不利益を被っている者を助けて社会の均衡を保つ者ということでもあるのだと思っています。

 そういう意味では、後者の要素は、本作のメインストーリーではなく、傍らに寄せたられた感があります。 メインのストーリーは「殺されたスーザンのために」と言えなくもないのですが、あくまでも大切な友人を殺された個人的な恨みですから。  

前作の最後で、HPを立ち上げてイコライザー業をスタートさせたはずですが、本作ではタクシー(lyft)運転手となって、不遇な乗客に救いの手を差し伸べることが彼の日常になっているようです。これは、仕事請負人ではなく自警団です。こちらの方が、ドラマ性が高いということなのかもしれませんね。おじいちゃんの話も、バカ息子たちの話も、タクシードライバーだからこそ自然に取り入れることができた話ですから。 

そして、映画全体の雰囲気も、サスペンスやミステリー要素が強くなって、前作とはずいぶん違いますね。 マッコールの戦闘スキルだけでなく、安楽椅子探偵的な捜査能力も存分に発揮されているところ。 そういう意味では、宣伝文句の「イコライザーvsイコライザー」は、公式が言っちゃダメなやつ。最初から、黒幕が誰なのか想定できてしまいます。 もっと言えば、本当の黒幕ってのがいるはずなんだけど、それは放ったらかしになっている気がします。 

あと、敵方はもっとクズ野郎でもよかったような気がします。 嵐の中の戦闘シーンでは、味方をおとりにして、マッコールを誘い出すようなことをしてもよかったのかな、と思ったりもします。 ちょっと、クセがなくて、あっさりしてましたね。

ラストの、嵐で避難命令が出た街での戦闘は、ちょっと出来すぎの環境設定のような気がしますが、最初の方からゴロゴロしてたし、天気予報も出てたみたいなので、まあ、気にしないようにしましょう。 

観客としては、塔の上で全体を観ている人間がいるという意識もあって、ちょっとゲームを観ているような感覚になっていました。 ハラハラするというよりは、次はどうなるのかな?と、ちょっと俯瞰で観ている感じ。 

もちろん、前作の良さも継承はしています。 

その場にあるブツを活用するDIY戦闘も、前作ほどではありませんが、健在です。

え?そんなものが武器になるの?とか。てっきり目くらましに使うのだと思っていたら、実は…とか。 

あと、本のチョイスも興味深いですね。 マイルズに手にとらせる本が「アメリカの息子」が、誤って白人女性を殺してしまった黒人青年を主人公に、その罪の背景となるアメリカの社会を告発した小説だったりするところなんか、ニヤリとさせます。 

さらに、「読むべき100冊」の最後の1冊であるプルーストの「失われた時を求めて」も、読書好きの主人公が、夜、眠れずに自分がかつて過ごした様々な部屋を回想する物語。明らかに、マッコールの生活と、そして本作の流れと重なります。 

前作に比べると、明らかにマッコールの戦闘能力が高くなっている(というより、やられなくなっている)ので、あまり、シリーズを長引かせない方がみんなにとって幸せなような気もします。さらに次回作があるならば、現在進行形の何かの問題と絡めて、マッコールのCIA最後のミッションの詳細が明らかになって完結という感じですかね。