映画「累 -かさね-」

土屋太鳳・芳根京子の朝ドラ女優W主演ですが、ただそれだけの映画だったら…と心配してましたが、充分面白かったですよ。 華はあるが芝居がダメなニナ(土屋)と、外見は醜いが母親譲りの天性の演技力を持つ累(芳根)が、キスをすると顔が入れ替わる口紅で…というお話。つまり、彼女たちは、2人4役(2人2役?)を演じるわけですね。 物語そのものは、中盤で明かされるある秘密も含めて、だいたい想定される範囲の中で収まるもの。「羽生田さん、それ驚かないの?」とか、「口紅を置いておいちゃダメ」とか、意味ありげすぎる演出が、とても分かりやすい(苦笑)。 でも、それでもいいです。劇中の2人の対決だけでなく、実力派若手女優2人の対決をリアルに見る映画ですから。しかも、対決と言いつつ、お互いに協力しあわないと、自分の見せ場が活きてこないという、なんともアンビバレンツな関係です。 累の芳根京子は、実際にオーディションで「あの子が来たら諦めるしかない…」と「オーディション荒らし」と呼ばれるほどで、そのスキルと強さは、累と重なってきます。今回のような役柄は見たことがありませんが、これも彼女の内面の一部の表出だと思うと、それだけでもゾクゾクするものがあります。もう、芳根強固です。 一方の、ニナの土屋太鳳。明朗な役柄が多い彼女ですが、人というものは、その一面だけで存在しているわけではなく、攻め込まれたとき、追い詰められたとき、怒り、嫉妬にかられる姿は、やはり演技のできる人なんだな、と。まあ、そもそも、芝居がダメな役と、その顔を入れ替えた天才女優の役の両方を演じないといけないわけで、めちゃめちゃハードルが高いですよね。もちろん、得意のダンスシーンもあります。  

物語上では、累は着実に女優として階段を駆け上がっていきます。 一方のニナは、当初「私がこんな顔なら生きていけない」と無神経な言葉を放っていたのが、ラストでは対になるようなひと言を発します。単に累に対抗するためのひと言かもしれませんが、いろいろ経験してしまった上で、人として成長したひと言だとも考えられます。 でも、それが、女優として価値のあることなのかどうかは分からないのが、芝居という魔性なのかもしれませんね。