映画「トップガン マーヴェリック」

【パイロット技術の継承、体当たりアクション映画の継承】

米海軍のエリート飛行士訓練校トップガンの伝説的パイロットであったマーヴェリックは、今も現役にこだわっているが、いよいよ居場所がなくなりつつある。当時のライバルで、現在海軍大将になったアイスマンの後ろ立てもあり、トップガンに教官として戻ることになった。生徒の中には、かつて訓練中に命を落としたグースの息子もいた。マーヴェリックは生徒たちを鍛え上げ、あるミッションに挑むことなる…という物語。

前作をトレースしたかのようなオープニングだけで、もう血沸き肉躍る世代です。

その後に、試験機によるマッハ10を超える飛行実験。無人機にシフトしようという上層の意向を振り切って、有人によるマッハ10飛行の実験を強行してしまう。熱血漢マーヴェリックが、あいかわらずマーヴェリックであることが良く分かります。

そして、ここだけで、今、トップガンの続編を作った意味のようなものが、伝わってきます。冒頭に流れるエリート飛行士訓練校「トップガン」の説明では、その目的を「エースパイロットの技術の継承」だと語られていました。無人機にとって代わられ、不要となりつつあるパイロットの技術。しかし、マーヴェリックは、最後に勝負を決めるのはパイロットの腕であることを実力で示そうとします。

そして、CGで何でも表現できて、配信によって自宅で気軽に映画を見られる時代に、わざわざ映画館の大スクリーンで、生身の体を使ったアクションを見せるということ。つまり、映画「トップガン」は、観客の心を躍らせる体当たりアクション映画を継承するための映画ということなのでしょう。

本作は、旧作のファンにとって胸が熱くなるようなシーンを満載しながらも、過去を振り返るだけの同窓会映画ではないし、次世代に継承するといっても「クリード チャンプを継ぐ男」のロッキーのように第一線を退いているわけでもない。現役にこだわり続けるマーヴェリックの最後の花道であり、次世代へのバトンタッチの物語。

あえて邦題をつけるとしたら「トップガン-継承」。

なんだか「イップ・マン 継承」みたいになってしまいました。

それ以外にも、旧作ファンへのサービスは多々あります。

一番は、前作で訓練中に命を落としたグースの息子ルースターが、トップガンに参加していること。ガチョウの息子がオンドリって、自分でコールサインを考えたのかな? 愛嬌のあるガチョウに対して、気の荒そうな若きオンドリという違いもいいし、同じ「oo」で音が似ているところもいい。

当然、ルースターにとっては、マーヴェリックは「自分の父親を死なせた奴」で、恨む気持ちもあるし、また自分の入隊を遅らせたという因縁もある。もちろん、入隊を邪魔したのは、ルースターのことを思ってのことだけど、本当のことは言えない。

マーヴェリックがこれまで家族を持たなかったのは、あのニヤけた笑顔が嫌で振られ続けたわけではなく、グースのことがあって、自分が家族を持つことに躊躇もあったのでしょう。

そして、かつてのライバルであるアイスマンも登場。偉くなっていった同僚とは違って、昇進することもなく現役パイロットであり続けるマーヴェリックとのギャップが際立ちます。

そのほかにも、Kawasakiのバイクに乗るシーンや、ビーチで生徒たちが遊びながらトレーニングするシーンなど、前作と重なるシーンが多々あります。もちろん、生徒たちは、ちょっとした小競り合いをしながら、チームが作られていきます。トップガンの中に女性パイロットがいて、かつ、誰かといい感じになったりする恋愛要員じゃないというところは、時代の違いですね。いいアップデートだと思います。

あとは、60歳近いトム・クルーズが、「彼女の家で2人イチャイチャしていたら、家族が帰ってきて…」という、青春映画のお約束をしているところは、本作品いちばんのお笑いシーンになっています。もう、サービス精神旺盛が過ぎます。

ただ、今回、課される作戦が、もう映画のための作戦というか、まるでゲームのように感じます。それこそ、「ドローンにやってもらおうよ」と思ってしまうようなミッション。まあ、旧作もそうですが、「戦争映画」ではないので、仕方がないところでしょうか。驚いたのは、相手国の第5世代戦闘機の「え? ブレーキ?」と思ってしまうような挙動。本当にあんな飛び方ができるのでしょうか? 

4DXなどのライド系のシアターだと盛り上がることは間違いないでしょう。ポップコーンをぶっちゃけながら見るのが、この映画の正しい見方だと思います。

まあ、ラストの展開は、「それは、都合良すぎるだろう」とは思いますが、それも、現在、某国では実際にあの機体を配備しているらしいので、「ないことはない」という微妙なリアリティがあります。ミリタリーに詳しい方が突っ込み始めたらキリがないのだろうとは思いますが。

手放しに楽しんで「映画らしい映画を観た!」という感覚にさせてくれます。