映画「SING/シング:ネクストステージ」

【いいところも悪いところも、ネクストステージ】

前作は、劇場では観ていなくて、旅行中の機内上映で観ました。なかなか集中できない環境ではありましたが、もう機内でボロボロと泣いた記憶があります。

うちの近くのイオンシネマのULTIRAで観ようと思ったら、吹替版しかありませんでした。

前作の後、ニュームーン・シアターは大人気になったが、レッドショアの大物ジミー・クリスタルの部下スーキには酷評される。クリスタルのオーディションに忍び込んだカンパニーの面々が、調子よく舞台プランをプレゼンすると、クリスタルに気に入られ、伝説のロック歌手クレイ・キャロウェイの出演を条件に、3週間後の開演が決まる…という物語。

今回の主な舞台であるエンターテインメントの集積地レッドショア(ラスベガスのようなイメージ)の劇場は、そのスケールが桁違い。まさに「ネクストステージ」の邦題通り。アニメなので、荒唐無稽なステージでも構わないのでしょうが、ちゃんと、こういう機構ならば実現できるかもと思わせるあたりは、真面目に作ってるな、というところです。

前作は、舞台に立つ実力もあるし、立ちたいという思いもある、そんなキャスト達が、歌うことで、それぞれの障壁を乗り越え、喜びを感じ、成長する物語として、とてもよくできていたと思います。

ただし、ひっかかったところは、主人公であるはずのバスター・ムーン。彼はいったい何をやりとげたのか。悪く言えば、騒ぎの発端を起こし、人を振り回して迷惑をかけまくり、問題の解決は人任せです。コミュニケーションタイプでいえば、まさに「プロモーター」で、情熱はあるけれど花火を打ち挙げるだけの人物(動物)です。まあ、「プロモーター=興行主」であり、それも、エンターテインメントの世界で生きるために必要な狂気と言えなくもないのですが。

本作でも、そのまま、その問題のスケールが大きくなりました。確かにネクストステージです。

事の発端は、クリスタルのオーディションで、適当に大風呂敷を広げたから。そもそものアイデアは、グンターのものです。そして、キャロウェイのところに、交渉に行くのは秘書・事務員のミス・クローリーです。どうでしょう、無責任すぎない?

その前の不法侵入についてまで、どうこういうつもりはありません。完全にコメディ・パートとして、BGM「バッド・ガイ」にあわせた、ドタバタも面白かったし。

ただ、ミーナの件については、やっちゃダメなやつでしょう。私生活で経験のないことを「やれ」と言われ困惑するミーナを、ほぼほったらかしですよ。今、しきりに「アップデートしていこうよ」と言われていること、そのままではないですか。

個人的に、イノセントに人に迷惑かけるというキャラクターが苦手なのもありますが、どうしても、バスターだけは引っかかります。やはり、プロモーターやプロデューサーと呼ばれる人たちは、こういう人ばかりなのでしょうか?

各キャストが「ミュージカルの力」によって個別の問題をクリアしていったり、個別の問題をクリアしていくことで「ミュージカルの力」が強くなって、それが集まってエンターテインメントが作り上げられるというところは、盛り上がること間違いないのです。

どうも、バスターだけは…というのが、やはり前作と共通する私の印象でした。

また、今作の新キャストであるアイナ・ジ・エンドのポーシャは、とてもキャラクターにあっていたと思いますよ。ただ、キャロウェイは、あの体格、年齢、15年のブランクということを考えると、稲葉浩志の歌声は奇麗すぎる、若すぎるという印象を受けました。

じゃあ、日本でU2ボノと同じような存在の歌手って誰がいるのかというと、ちょっと思いつきませんが。