映画「アンチグラビティ」

【インセプション+マトリックス+ドクター・ストレンジ+フォートナイト?】

イオンシネマのワンデーフリーパスポートで1日5本映画鑑賞のうちの4本目です。

まったく、この映画のことを知らずに「ロシア製のSFらしい」という情報のみで見ました。

事故に遭った建築家の男が目覚めると、そこは、重力が歪み、物質も粒子化したり復元したりする、引力が不安定な世界。謎の黒い怪物リーパーに襲われ、危機を救ってくれた武装グループの話によると、そこは昏睡状態の人々の脳内がつながった世界なのだと…という話。

まずは、重力の歪んだビジュアル表現はインセプションですよね。脳内の世界ということでシナプスっぽいデザインだったり、仮想世界の建物にもロシアらしい意匠が見られるのは面白いところですが。

そして、脳内がつながった仮想世界というコンセプトは、マトリックスでしょう。マトリックスは、1つの電脳空間に個々人の脳がログインするような形でしたが、こちらは、昏睡状態の人の脳内の集合体だから、つぎはぎになって世界が歪むということなのでしょうか。

そして、この世界の人々のなかには、現実世界でのスキルを拡張したような、特殊な能力を持つものがいて、主人公にもその力が期待されています。その力を発揮するときのビジュアル表現が、どうもドクター・ストレンジの魔術っぽい。そういうえば、ドクター・ストレンジにも、世界が歪むような表現がありました。

さらに、現実世界で建築家である主人公の特殊な能力は、ゲームの「フォートナイト」を思わせます。ただ、その能力を発揮する場面を使って戦う場面があまりありません。「いや、その能力をバトルで最大限生かすところが見たいんだよ、こっちは」と言いたくなります。

面白いとは思うのですが、どうも既視感アリアリで、Something Newが見当たらないというのが正直なところ。

「脳内世界をどうつなげるのか?」という大前提は突っ込んではいけないところですが、例えば、脳内世界でその人物が「死ぬ」ということは、現実世界の人物にとってどういう意味があるのかといった根本的な設定が、いまいち詰められていない気がしました。リーパーの設定も、なんだか納得感がありません。あの、敵対する武装グループは誰なんだよ?とか、突っ込み始めたらキリがありません。

「なんだか、もっと面白くできたはずなのになぁ」と感じました。現実世界ではいい人生を送れない昏睡状態の人々が、能動的に脳内世界で生きることを選ぶとしたら、それは幸せなのかといった、根源的な幸福感にもつながる、いい命題があるのに、もったいないです。

そもそも、この映画のタイトル「アンチグラビティ」は邦題で、原題は「KOMA」。英語で表記すると「COMA」で、直訳すると「昏睡」。邦題も、そのまま「昏睡」でよかったのでは? 確かに重力がおかしくなった世界が舞台ではありましたし、反重力バトルアクション的なシーンはありましたが、それが主題ではないのですから。