映画「シュガー・ラッシュ:オンライン」

年が明けてしまいましたが、2018年の劇場映画納めは、「シュガー・ラッシュ:オンライン」でした。娘2人と一緒に鑑賞です。

前作「シュガー・ラッシュ」は、壊し屋ラルフが、自分が敵役であることに疑問を持ち、そこから「ヒーローとは?」を考える作品でした。「壊す」という、普通に考えれば悪でしかない特性を生かしてヒーローになることができる。そして、バグ持ちのヴァネロペだって、不具合を持ったままプリンセスになることができる。最近のディズニーらしい多様性の受容の物語でした。

本作の舞台は、前作のゲームセンターの中から、時代が進歩してインターネットの世界に広がります。前作だって、電源コードでつながって異なるゲーム間を行き来してたのだから、「ネットがなくても他の世界にいけたんじゃないの?」って話はナシってことで。 パケットや、ポップアップ広告の表現などは、ニヤリとさせます。ヒトの脳内で何が起こっているかをアニメ化した「インサイド・ヘッド」のように、こういう凝ったところは、大好きです。ただ、物語の展開に、もっとインターネットやオンラインゲームの特性を活かすことができたはずなのにな、という思いはあります(このあたりは「子どもにも理解できるように」というところかもしれません)。 

また、ディズニープリンセスや、マーベル、スターウォーズと、巨大帝国の力を最大限活かしています。マーベルのキャラクターが出てくるということは、当然、あの人もカメオ出演しています。セルフ・パロディも満載です。でも、あのつるつるしたジャバ・ザ・ハットみたいなキャラクターは、そのままジャバ・ザ・ハットではだめだったのか? 

それはともかく、ストーリーの話。

冒頭で、いつも同じコースを走るシュガー・ラッシュの中で、ラルフが作った別コースを走って、これまでにはなかった楽しさを感じるヴァネロペ。これが、次への展開の布石になっているあたり、上手いですねぇ。インターネットの中で、オープンワールドで、特定のコースもなく、バイオレンス要素も溢れるスローター・レースでゾクゾクするような経験をしてしまい、自分の能力を最大限活かすことができる場を見つけてしまったヴァネロペは、もう甘いだけのシュガー・ラッシュには戻れません。しかし、居心地の良いゲーセンの中が好きなラルフは、それを素直に認めることができません。いや、友達だからこそ、彼女を元に戻そうとします。本当の友情ってなんだろう?というお話。

物語は、子どもたちにもわかるように、とてもシンプルでした。ただテーマ的には、高校生ぐらいがちょうどいいのではないでしょうか。 前作を幼い頃に観た少年・少女が、自分の進路を考えるような年代になって、そこで出会う葛藤を取り上げたということなのでしょう。 当然、大人が観ると、心当たりがありすぎて、刺さりまくります。 

男女関係なく友情の話ではあるのですが、本作で、新しい世界に飛び出すのが女性、今の世界にこだわるのが男性であるのは、現実の世界でもありがちだなぁと思います。 それは、やはり、「今の世界」がどうしても男性中心に作られてきた社会で、女性が自分の力を最大限に活かすには「新しい世界」を作っていくしかないというところも、反映しているのでしょうね。だから、スローター・レースで出会うリーダーのシャンクも女性なのでしょう。 

それにしても、アメリカ映画って、ちっちゃいキャラクターが集合して、巨大なモンスターの形になって襲ってくるタイプのやつ、好きだよね。